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数理論理学 確認問題8
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●問1

素数全体の集合を S,奇数全体の集合を T で表す.

(1) 命題「S は T の部分集合である (S⊆T)」は偽である.
    部分集合の定義をふまえて,この命題を反証せよ.反証の方針を明示すること.

(2) 命題「S と T は互いに素である (S∩T=∅)」は偽である.
    共通部分や空集合の定義をふまえて,この命題を反証せよ.
    反証の方針を明示すること.

●問2

S, T を任意の集合とする.

(1) S=S∩T ならば S⊆T を証明せよ.ただし,証明の方針
    (何を仮定して何を導くかなど)を明示すること.

(2) 証明中で使った証明法を,論理式に表れる論理記号と関連させて説明せよ.

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●答1 (集合の性質の反証,論理式の否定)

(1) 包含関係 S⊆T が成り立たないことを示す.
反証:
S に所属して T に所属しない要素が存在することを示す.
2 は素数なので S の要素であるが,奇数ではないので T の要素ではない.

(2) S と T が互いに素ではないこと (S∩T≠∅) を示す.
反証:
S と T の両方に所属する要素が存在することを示す.
3 は素数であり奇数でもあるので,S と T の両方に所属する.

[解説]

(1)
集合 S が集合 T に包含されることは,S⊆T ⇔ ∀x (x∈S ⇒ x∈T) で定義される.
   ¬S⊆T
⇔ ¬∀x (x∈S ⇒ x∈T)       (部分集合の定義)
⇔ ∃x ¬(x∈S ⇒ x∈T)       (全称の否定)
⇔ ∃x (x∈S ∧ ¬x∈T)       (含意の否定)
だから,S⊆T を反証するには,x∈S かつ ¬x∈T となる x があることを示せばよい.
解答の反証では,x=2 の場合に x∈S かつ ¬x∈T となることを示した.
なお,背理法を使う反証も可能である.

(2)
集合 S と T の共通部分は,x∈S∩T ⇔ x∈S ∧ x∈T で定義され,
空集合 ∅ は,x∈∅ ⇔ ¬∃x x∈∅ で定義される.
   S∩T≠∅
⇔ ¬ S∩T=∅              (等号否定≠の定義)
⇔ ¬¬∃x x∈S∩T    (空集合の定義)
⇔ ∃x x∈S∩T              (二重否定)
⇔ ∃x (x∈S ∧ x∈T)        (集合の共通部分の定義)
だから,S∩T≠∅ を反証するには,x∈S かつ x∈T となる x があることを示せばよい.
解答の反証では,x=3 の場合に x∈S かつ x∈T となることを示した.
3 以外にも,奇数の素数であれば具体例として使える.
なお,背理法を使う反証も可能である.

●答2 (集合の性質の証明)

(教科書 p.110 確認問題2.6 の解答と解説を参照)

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授業のホームページ

山田 俊行
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