━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 数理論理学 確認問題5 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●問1 対象領域(変数の変域)を整数の集合 U={0,1,2,3,4,5} とする述語 P(x) が (a) x は 5 以下,(b) x は 0 と異なる,(c) x は偶数,(d) x は 1 と等しい, (e) x は負,の各場合について,次の問題に答えよ. (1) P(x) の真理集合 {x∈U | P(x)} を,要素を並べた形 (たとえば,P(x) が「x は素数」なら {2,3,5}) で表せ. (2) 全称命題 ∀x P(x) の真偽を○×で答えよ. (3) 存在命題 ∃x P(x) の真偽を○×で答えよ. ●問2 ここでは,整数を対象とする論理式を扱う.つまり,変数の変域が整数全体の 集合Zであると約束し,x∈Z や y∈Z などを暗黙の了解と考えて省略する. (1) 整数に関する主張「x が奇数であることは x の平方が奇数であることの 必要十分条件である」を論理式で表せ.ただし,x が奇数であることを 「x:奇」で表すこと. (2) この主張が正しいことを証明せよ.証明方針(何を仮定して何を導くか) を明示すること.なお,証明中で「偶数であることは奇数でないことの 必要十分条件である」という整数の性質を使ってよい. ────────────────────────────────────── ●答1 (述語の命題化,全称と存在の意味) (1) (2) (3) (a) {0,1,2,3,4,5} ○ ○ (b) { 1,2,3,4,5} × ○ (c) {0, 2, 4 } × ○ (d) { 1 } × ○ (e) { } × × [解説] 述語 P(x) の x を 0, 1 などの対象に置き換えると命題となり,真偽が定まる. 述語 P(x) の量化により得られる ∀xP(x) や ∃xP(x) も命題であり,真偽が定まる. ∀xP(x) が真となるのは,全ての対象 x について P(x) が真となるときである. ∃xP(x) が真となるのは,1つ以上の対象 x について P(x) が真となるときである. この問題では対象領域が {0, 1, 2, 3, 4, 5} という有限集合なので, ∀xP(x) は P(0)∧P(1)∧…∧P(5) と同値であり, ∃xP(x) は P(0)∨P(2)∨…∨P(5) と同値である. なお,(1)(e) の { } は ∅ と同じ0個の要素からなる集合だが, {∅} は空集合1個からなる集合なので誤り ●答2 (証明法:同値の証明,含意の直接証明と間接証明) (1) x:奇 ⇔ x^2:奇 (2) (a) x:奇 ⇒ x^2:奇,(b) x^2:奇 ⇒ x:奇,の二つの含意を示す. (a) の含意は直接証明し,(b) の含意は対偶を証明する. 証明: (=>) (教科書 p.108 確認問題2.1 の証明と解説を参照) (<=) 整数 x が奇数でないと仮定して,x^2 が奇数でないことを導く. x が奇数でない,つまり,偶数であると仮定すると,偶数の定義から, x=2i を満たす整数 i が存在する.x^2 = (2i)^2 = 4 i^2 = 2 (2 i^2) であり, 2 i^2 は整数だから,j = 2 i^2 と定めると,x^2 = 2j と表せる. よって,偶数の定義から,x^2 は偶数,つまり,奇数ではない. [解説] (1) 確認問題3の問1で学んだように,A⇔B は (A⇒B)∧(B⇒A) と論理同値なので, 問題の主張は,次の論理式でも書ける. (x:奇 ⇒ x^2:奇) ∧ (x^2:奇 ⇒ x:奇) また,全称や存在の記号を明示すると次の論理式でも書ける. ∀x (∃i x=2i+1 ⇔ ∃j x^2=2j+1) (2) まず,用語の定義を復習する. A⇔B が真のとき,A は B の(B は A の)必要十分条件であるという. A⇒B が真のとき,A は B の十分条件,B は A の必要条件という. 上記の (a) は x:奇 が x^2:奇 の十分条件であることに対応し, (b) は必要条件に対応する. 同値 A⇔B の証明:双方向の含意 A⇒B と B⇒A を示す 含意 A⇒B の直接証明:A を仮定して B を導く 含意 A⇒B の間接証明:¬B を仮定して ¬A を導く(対偶の証明) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 授業のホームページ 山田 俊行 https://www.cs.info.mie-u.ac.jp/~toshi/